では皆さんが散瞳薬禁忌の根拠として挙げていらっしゃる「緑内障」の定義ですが、
これはhttp://www.nichigan.or.jp/member/guideline/glaucoma3-2.pdfにあるように
視神経、つまり網膜神経節細胞の構造的機能的異常です。
実際に散瞳薬(特に抗コリン薬)が禁忌(もしくは慎重使用)と考えられている(しかし
明確なガイドラインはない)のは、「瞳孔ブロックを誘発するリスクの高い、
未治療の狭隅角あるいは閉塞隅角」です。
つまり「緑内障」の意味と、散瞳薬使用が禁忌である病態の意味が
全く異なっているという現状があるのです。
かつては緑内障の診断「常識」が眼圧亢進による時代(正常眼圧緑内障の概念が
なかった)があり、「緑内障禁忌」はその時代の産物と言えます。
ちなみに当時の私の恩師は眼圧亢進の有無で散瞳点眼薬の可否を決めていました。
しかし時代とともに緑内障の知識が進歩し、現状にそぐわなくなっています。
具体的に言えば実際にはリスクのない「原発開放隅角緑内障」が「散瞳薬禁忌」と
なる一方で、実際にはリスクの高い「緑内障のない閉塞もしくは狭隅角」が
抗コリン薬禁忌とならなくなる矛盾が生じてしまうのです。
総括しますと、本問題は
①右視神経乳頭陥凹の拡大(これだけでは緑内障の確定診断にはならない)
②時に頭痛・嘔気・霧視(やはりこれだけでは原発閉塞隅角の診断にならない)
③緑内障、閉塞隅角の根拠となるべき画像所見や術語が提示されていない。
という欠陥があります。
正解をbにするには、7に記載した理由で緑内障の診断プロセス上問題がありますし
eでは皆さんがご指摘のように散瞳薬使用の安全性が確保されていない(逆もまた
然りですが)が問題です。このシチュエーションで「まず」行うべき検査は、
散瞳薬による原発閉塞隅角症誘発のリスクの有無を判断する最大の決め手となる
隅角検査なのですが、それが選択肢に示されていません。
したがってこの問題を採点基準の見地からどう扱うかは、
個人的には除外が妥当ではと考えますが、
正式な発表を待ちたいと思います。
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