返信先: 109A-11

TOP 第109回 国試速報掲示板 A問題 109A-11 返信先: 109A-11

作成者 返信
専門家 # Posted on 2015年2月8日 at 17:49 修正  削除

中脳被蓋が軽度萎縮しているので、PSP を疑う所見ではありますが、厳密にはこれだけでは診断できません。あくまでも変性疾患は剖検による病理学的所見がなければ確定は出来ません。特に最近はMRIや臨床像は PSP でも病理が CBD という PSP-CBD という概念もあります。しかし、設問の最も考えられるのはという質問では PSP を選ぶしかありませんので答えは d.進行性核上性麻痺です。

なお、Parkinson 病と DLB は特徴的なMRI所見はありません。DLBにおいてはECD-SPECT における後頭葉の血流低下が診断基準の支持的所見として盛り込まれており、これくらいなら国試で出題されてもおかしくないので覚えておいてよいでしょう。その他は FDG-PET で後部帯状回の集積が比較的保たれるという cingulate island sign というのが有名です。認知症をきたした際の AD との鑑別に有用との意見もあります。MRI では特徴的所見はありませんが、それでも頑張って鑑別を行う試みがなされています。VSRADというソフトが臨床現場では使用されていますが、画像統計解析を用いた選択的萎縮領域の検出が目的で、ADにおいては内側側頭葉や部帯状回、側頭頭頂連合野、頭頂後頭連合野などの萎縮が特異的とされております。認知機能と関連が深い部位として後部帯状回を含む頭頂葉というのは国試の範囲として覚えておいてもよいと考えます。最新の研究ではDLBにおいては脳幹後部の萎縮がADより高いことが言われており、これを組み込んだソフトが開発段階で、おそらく皆さんが臨床に出た後には広く使われる様になるでしょう。「DLBにおいては脳幹後部の選択的萎縮があり、ADとの鑑別に有用」というのはトピックスとして覚えておいてください。

正常圧水頭症(iNPH)は脳室拡大、シルビウス列開大や脳梁角の開大が特徴的でEvans index などのスコアで評価します。基本は axial で評価しますが cornal でも可能です。気をつけるのは進行したアルツハイマー病(AD)でも萎縮進行により脳室やシルビウス列の開大が目立つことです。その際に鑑別に有用なのが高位円蓋部(頭頂部)の脳溝狭小化の所見です。ADでは高位円蓋部の脳溝も萎縮で開大しますが、iNPH では狭小化するのが特徴です。iNPH の所見として「Evans index の増加、脳梁角、シルビウス列の開大、高位円蓋部脳溝の狭小化」は覚えておいてよいかもしれません。あとは ECD-SPECT で帯状回の血流低下とその辺縁の血流増加がみられる、所謂 DESH pattern をとるのが特徴的です。これは国試ではさすがに出さないでしょう。

MSAは大きくはMSA-PとMSA-Cとがありますが、小脳萎縮に加え、基底核特に被殻の菲薄化の所見がみられます。そして進行した症例では橋横走線維や縦走線維の変性が見られ、所謂十字サインが見られます。T2WI axial 像における橋に十字に高信号域を認めるのが特異的な所見ですから、国試で出るならこれでしょう。
変性が小脳優位か基底核優位かで異なりますが、Parkinsonism が前面に出る MSA-P では被殻の萎縮が目立ちます。萎縮に伴い被殻の外側に線上のCSF space が見えるの特徴的です。いずれも axial を見ないとわかりませんので axial の基底核のスライスが出されるはずです。
なお本例は年齢が示されていませんが、小脳の大きさは60-70代とすると年齢相応です。特異的に萎縮しているとは言えませんので提示画像ではMSAを疑う所見はありません。

CBS は中心溝周囲の左右差が特徴的で MRI のaxial を見ないとわかりません。 進行した症例では中心溝のみならず左右差が目立ちます。ありふれた症例ではないので、前2つに比べて典型的画像の入手が難しく、設問として使われることはほぼないでしょう。